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お子様のご相談

*以下の事例はいくつかの実例を組み合わせた架空の事例です。

幼稚園男児のAくん

相談概要

Aくんは、幼稚園に入ってしばらくしても言葉がほとんど出ず、他の子どもたちと一緒に遊ばず、いつも部屋の隅で一人で過ごしていました。活気がなく、楽しそうでないAくんの様子を見て、幼稚園の先生とご両親は心配になり、ご両親はいつも通っている小児科の先生に相談しました。医師は、子どもの心理発達の状態に詳しい相談機関にかかるよう勧め、Aくんとご両親と3人で当相談室に来所されました。

心理療法経過

セラピスト2名がご両親の心配ごとやこれまでのAくんの育ちの様子を伺い、Aくんの様子を見せてもらいました。Aくんは人との接触にとても敏感なところがあり、人と関わるよりもおもちゃやテレビと接している方が安心できるようでした。セラピストがAくんの気持ちにそっと触れ、Aくん自身が何を感じ、考えているのかを言葉にしていくと、Aくんは表情や声のトーンといった言葉以前のやりとりで反応し、人に対する好奇心をもっていることが見て取れました。Aくんが人と触れ合いたい気持ち、お話しをしたいといった気持ちを強め、コミュニケーションの発達を促すために、毎週1回の心理療法が役立つと思われました。また、ご両親がAくんの理解を深め、Aくんとの関り方を考えるためのコンサルテーション面接も並行して行うことになりました。Aくんの心理療法は長期に渡ることが予想されたため、サポチル(認定NPO法人子どもの心理療法支援会)から料金支援を受けることになりました。

心理療法が始まり、Aくんはセラピストと触れ合ったり、引きこもったりを繰り返しながら、目の前のセラピストのことをだんだんとしっかりとした視線で見るようになっていきました。日常生活では、Aくんはご両親に対してこれまでになく感情を激しく出すようになり、ご両親はAくんの表現に戸惑いながらも、Aくんが何を言おうとしているのかを考えていきました。とてもゆっくりとしたペースではありますが、Aくんは自分のしたいこと、してほしいことを仕草や一つの言葉で人に伝えてくるようになりました。また、幼稚園では先生の傍にいて他の子どもたちの様子を見ながら、一緒の場所で過ごせるようになっていきました。

小学生女児のBさん

相談概要

小学校中学年のBさんは、朝起きられず学校に行けない、お腹が痛くなり家から出られないことを低学年の時から繰り返していました。時々登校できた時は保健室で過ごしていました。スクールカウンセラーの先生がお母様と話し合う中で、お母様には随分と長い間、Bさんの子育てに苦労があったことが分かってきました。スクールカウンセラーの先生は、お母様にはBさんについてじっくりと考える時間を持ちたい思いがあり、また、Bさんに心理療法が役立つのではないかと考え、当相談機関を紹介し、Bさんはお母様と一緒にやって来ました。

心理療法経過

おもちゃや描画といった遊びを通した面接では、Bさんは、自分の思いを言えばお母様を困らせ、取り返しのつかないダメージを自分がお母様に与えてしまうのではないかと怖れていること、自分の言いたいことややってみたいことを抑え、自分の気持ちを無視してこれまでやってきたことが考えられました。心理療法が始まると、Bさんは、自分の思いをセラピストに表出して、セラピストがどんな反応をするのかを試したり、自分は存在する価値の無いダメな子どもである、という思いをセラピストに味わわせるやり方で思いを伝えたりするようになっていきました。お母様との面接では、お母様は、ご自身の家族関係への悩みが深く、これまでそうしたくてもBさんのことにじっくりと向き合う余裕がなかったことを話され、改めてBさんがどのようなお子さんなのか、自分との関係はどうなのかをセラピストと一緒に考えていきました。また、Bさんとお母様の同意を得て、セラピストは学校の先生やスクールカウンセラーと連携を取り、Bさんの心の発達を促すために協働していくことになりました。

中学生のCくん

相談概要

児童養護施設に入所しているCくんがいつもイライラしている、学校に行かない、虚ろな目をして元気がない、といった様子を心配した施設の担当の先生が相談に訪れました。サポチル(認定NPO法人子どもの心理療法支援会)の「児童福祉領域のアセスメントサービス」という、相談料金を援助してもらえる仕組みを利用して、相談が始まりました。

心理療法経過

施設の担当の先生は、Cくんのことを真剣に考えているにも関わらず、Cくんからは無視され、信用されてもらえない気持ちを抱き、Cくんにどう接したらよいか悩んでいました。セラピストは担当の先生から数回話を聞いた後、Cくんを相談室に連れて来てもらいました。施設の外部にある場所の方が、Cくんの生活を脅かすことなく、Cくんが混乱を強めることなく安心して話ができると考えたからでした。数回のアセスメント面接では、Cくんは大半の時間黙って過ごしましたが、時に、短い言葉を添えてイラストを描いたり、セラピストの質問に答える形で施設での生活に対する思いを少し話したりしました。そうした中で、Cくん自身が自分に自信がなく、人から大事にされるべき存在ではないと認識していること、大人に頼りたい気持ちはどこかにありそうでも、実際にどうしたらよいかを考えられないでいることがわかってきました。心理療法は数年かかりましたが、C君は大人に対する信頼感を次第に持てるようになっていきました。